無料体験の勧誘は訪問販売になることがある
無料体験の案内が届いて、行ってみたら本契約の話になった。よくある流れです。
店舗で結んだ契約なので訪問販売ではない、と思われがちですが、どこで契約したかだけでは決まりません。
契約した場所ではなく、呼ばれ方で決まる
特定商取引法2条1項2号は、営業所等で契約した場合も訪問販売に含めています。対象は、営業所等以外の場所で呼び止めて同行させた者と、政令で定める方法により誘引した者です。条文はこれを「特定顧客」と呼んでいます。
その政令が、特定商取引に関する法律施行令1条です。1号がこれです。
一電話、郵便、民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは法第四条第二項に規定する電磁的方法(以下「電磁的方法」という。)により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し若しくは拡声器で住居の外から呼び掛けることにより、又は住居を訪問して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること。
長い列挙の最後にある**「勧誘をするためのものであることを告げずに」が要点です**。手段は電話でもビラでも電磁的方法でもよく、勧誘目的を伏せて来訪を求めたかどうかが分かれ目になります。
同条2号は別の型です。
二電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、又は住居を訪問して、他の者に比して著しく有利な条件で当該売買契約又は役務提供契約を締結することができる旨を告げ、営業所その他特定の場所への来訪を要請すること(当該要請の日前に当該販売又は役務の提供の事業に関して取引のあつた者に対して要請する場合を除く。)。
こちらは「他の者に比して著しく有利な条件」を告げて呼ぶ形です。括弧の中で、その要請より前に取引のあった相手は除かれています。既に通っている店から案内が来た場合は、この号には当たりません。
どう呼ばれたか条文の側の扱い
- 勧誘が目的だと告げずに来訪を求められた施行令1条1号の誘引方法にあたる手段は電話・郵便・電磁的方法・ビラ・訪問など。告げたかどうかで分かれる
- 著しく有利な条件を告げられて呼ばれた施行令1条2号の誘引方法にあたるただし、その要請より前に取引のあった相手への要請は除かれる
- 自分で調べて予約して行ったこの号には当たらない営業所等での契約なので、訪問販売の規定の外にいる
8日は、金額と期間の線と関係なく効く
特定顧客にあたるなら、9条1項のクーリング・オフが使えます。1か月を超えるかも、5万円を超えるかも問いません。書面を受領した日から起算して8日です。
効き方は、特定継続的役務の場合より広い面があります。9条3項です。
申込みの撤回等があつた場合においては、販売業者又は役務提供事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
さらに5項があります。
販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該売買契約に基づき引き渡された商品が使用され若しくは当該権利が行使され又は当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該商品の使用により得られた利益若しくは当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭又は当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
「役務が提供されたときにおいても」なので、既に1回施術を受けていても、その分の対価を請求されない形になっています。6項は、受領している金銭を速やかに返還することを事業者に求めています。
回数が多すぎる契約には、1年の道がある
8日を過ぎていても、量のほうから解除できる場合があります。9条の2第1項です。同項1号は、その日常生活において通常必要とされる回数・期間・分量を著しく超えて役務の提供を受ける役務提供契約を挙げています。
2号は事業者の側の認識を見ています。契約によってその読者にとっての回数や期間が著しく超えることになると知りながら、あるいは既に著しく超えていると知りながら申込みを受けた場合です。同じ店で回数券を重ねて契約している場面が、ここに当たりえます。
期間は同条2項です。
前項の規定による権利は、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結の時から一年以内に行使しなければならない。
起算は契約の締結時で、書面の受領日ではありません。8日ではなく1年です。
ただし第1項にはただし書きがあり、その契約の締結を必要とする特別の事情があったときは除かれます。何が「著しく超える」かも条文に数字はありません。回数が多いことだけでは決まらないので、通う頻度と有効期限を並べて説明できるようにしておくことになります。
同条3項が9条3項から8項までを準用するので、解除したときに違約金を請求されない点は同じです。
記録に残しておくもの
呼ばれ方が分かれ目になるので、そこが残る形にしておくことになります。
- 案内が来た経路。SNSのメッセージ、メール、ビラ、電話のどれか
- その案内に、契約の話をすると書かれていたか
- 「特別に」「今日だけ」といった条件が告げられていたか
- 書面を受け取った日。8日の起算はここから
2番目が1号、3番目が2号に対応します。案内の画面はその日のうちに保存しておくと、あとで探さずに済みます。
自分から予約した場合はどうなるか
1号も2号も、事業者の側から呼ばれた場合を書いています。1号は勧誘をするためのものであることを告げずに来訪を要請した場合、2号は著しく有利な条件を告げて来訪を要請した場合です。どちらも起点は事業者の要請のほうにあります。
公式サイトを見て自分で予約を入れたなら、その要請がありません。同じ無料体験でも、たどり着いた経路で2条1項2号に当たるかどうかが変わることになります。予約したあとに別の案内を受けて再び行った場合は、その回の経路を別に見ます。
このサイトが載せているスターライトフィットネス(札幌)は、無料体験の予約と問い合わせの窓口を電話番号つきで出しています。特定商取引に関する表記には事業者名・所在地・電話番号があり、料金は税込で表示されています。ただしキャンセルの条項は「セミナー受講」と「物品」について書かれています。月会員契約の途中でやめるときの扱いは出てきません。期間が1か月を超え金額が5万円を超えるかは選ぶプランで変わります。そこはパーソナルジムのクーリングオフ条件と合わせて見るところです。
特定継続的役務のほうと、どちらも見る
1か月と5万円の線を超えている契約なら、48条のクーリング・オフも別に効きます。線の数え方はパーソナルジムのクーリングオフ条件にまとめました。
勧誘のときに事実と違うことを告げられていた場合は、8日を過ぎても取り消せることがあります。範囲はパーソナルジムの勧誘で話が違ったときにあります。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 2条1項2号は、営業所等で契約した場合も特定顧客なら訪問販売に含めている
- 施行令1条1号は「勧誘をするためのものであることを告げずに」来訪を要請した場合
- 同2号は著しく有利な条件を告げて呼んだ場合。前に取引のあった相手は除かれる
- 9条のクーリング・オフは、金額と期間の線と関係なく8日で効く
- 9条5項により、既に役務が提供されていても対価を請求されない
- 9条の2は、回数・期間・分量が著しく超える契約を締結の時から1年以内に解除できるとしている