ジムの休会は契約を止めていない
しばらく通えなくなったと伝えると、休会を案内されることがあります。会費が下がる、あるいは止まる代わりに、席は残しておくという形です。
やめるより穏やかに見えます。ただ、条文の側から見ると、休会という制度は用意されていません。
「休会」という語は、条文のどこにも出てこない
特定継続的役務提供(1か月を超えて続き、5万円を超える契約だけが対象になる決まり)の章を通して読んでも、休会に当たる言葉はありません。消費者契約法にもありません。
あるのは契約書面の記載事項です。特定商取引法42条2項の柱書がこうです。
役務提供事業者は、特定継続的役務提供契約を締結したときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、次の事項について当該特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面を当該特定継続的役務の提供を受ける者に交付しなければならない。
その4号がこれです。
役務の提供期間
条文が書かせているのは期間であって、期間を止める仕組みではありません。休会は事業者が自分の規約で作ったもので、中身も名前も事業者ごとに違います。
期間が伸びるかどうかは、書面にしか書いていない
だから確かめる場所は1つに絞れます。休会したあいだ、契約書面に書かれた提供期間が伸びるのか、それとも進み続けるのか。
伸びるなら、通える回数は減りません。進み続けるなら、休んだぶんだけ受けられる役務が消えます。同じ「休会」という名前で、この2つが分かれます。
書面の期間の欄と、規約の休会の条項を並べて読むことになります。片方だけでは決まりません。
49条の上限は、解除したときにしか効かない
途中でやめるときの請求には上限があります。特定商取引法49条2項です。
役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。
読むところは冒頭です。「前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたとき」と書かれています。解除がなければ、この上限は働きません。
休会は解除ではないので、休会している間はここが効きません。上限の計算のしかたはパーソナルジムの中途解約と請求できる額の上限にまとめました。
休会する
- 契約は続いている
- 49条2項の上限は働かない
- 期間が伸びるかは書面と規約で決まる
中途解約する
- 契約が終わる
- 49条2項の上限が働く
- 提供済みの対価と政令の額までしか請求されない
契約が続いているか終わっているかで、上限の規定が働くかどうかが分かれる
やめるつもりで休会を選ぶと、上限のある道から降りることになります。休むあいだも席を残したいのか、それとも終わらせたいのかを、先に決めることになります。
休会中の会費に効きうる条文はある
休会中も一定の額を払う決まりを置いている事業者があります。ここは特定商取引法ではなく、消費者契約法10条を見ます。
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
「義務を加重する」条項で、なおかつ「一方的に害する」ものが対象です。額が大きいというだけでは当たりません。役務を受けていない期間の負担と、事業者が実際に負っている費用との釣り合いで見ることになります。
休会に金額の条件が付いていて、それが解約を思いとどまらせる働きをしている場合は、消費者契約法9条1項1号のほうも見ます。
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの当該超える部分
こちらは解除に伴う額を対象にしています。休会そのものの費用は解除に伴うものではないので、直接は当たりません。線の引き方はパーソナルジムの解約金に効く条文があるで扱いました。
8日以内なら、休会ではなく別の道がある
契約書面を受け取った日から8日以内なら、42条2項6号が名指ししている49条とは別に、48条の解除が使えます。
第四十九条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項、第五項及び第六項の規定に関する事項を含む。)
書面には49条のことも48条のことも書かれているはずです。8日の内側にいるときに休会を選ぶと、その期間は休会中も進みます。起算の数え方はパーソナルジムのクーリングオフ条件にあります。
申し出る前に見る場所
- 契約書面の「役務の提供期間」の欄
- 規約の休会の条項。期間が伸びるのか進むのか
- 休会中に払う額と、その名目
- 休会から復帰するときに何かかかるか
- 書面を受け取った日から8日を過ぎているか
3番目は名前で判断できません。「休会費」「席料」「システム利用料」のように呼び名が分かれるので、何に対する対価なのかを聞いて記録に残します。
事業者がやめさせないために事実と違うことを告げることは、特定商取引法44条が禁じています。そこはパーソナルジムの勧誘で話が違ったときにまとめました。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 休会という語は特定商取引法にも消費者契約法にも無い。事業者の規約の制度
- 42条2項4号が書かせているのは「役務の提供期間」で、止める仕組みではない
- 49条2項の上限は「解除されたとき」に働くので、休会中は効かない
- 休会中の負担は消費者契約法10条の対象になりうる。額の大きさだけでは決まらない
- 8日の内側にいるなら、休会ではなく48条の解除を先に見る